生態学/京都大学名誉教授、元京都大学霊長類研究所長、前日本生態学会長、元「野生生物と社会」学会長。
徳島県出身。1987年京都大学大学院理学研究科博士後期課程修了。理学博士。神戸大学、京都大学生態学研究センター、総合地球環境学研究所、京都大学霊長類研究所を経て現職。
『はじめて学ぶ生物文化多様性』(共編著・講談社・2020)、『ユネスコエコパーク−地域の実践が育てる自然保護』(共編著・京都大学学術出版会・2019)、『日本列島の三万五千年−人と自然の環境史(全6巻)』(編著・文一総合出版・2011)、『世界遺産をシカが喰う−シカと森の生態学』(共編著・文一総合出版・2006)、『熱帯雨林』(岩波書店・1999)、『屋久島-巨木と水の森の生態学』(講談社・1995)
湯本貴和さんは、生態学がご専門です。屋久島をフィールドに樹木とその繁殖を助ける動物(ハチ・ハエ、トリ・サルなど)の関係について初めて学術的にとりあげ新たな学問領域を切り拓きました。その後、アフリカ、南米、アジアの熱帯雨林で植物と動物の相互関係に関する研究を進め、総合地球環境学研究所・環境史プロジェクト「日本列島における人間─自然相互関係の歴史的・文化的検討」において、日本列島のさまざまな自然の成り立ちと「ワイズユース(賢明な利用)」について、多分野融合の共同研究を推進しました。第3回では、「生物多様性」及び「生物文化多様性」について、また「環境史」や「ワイズユース(賢明な利用)」の考え方について学びます。
持続的社会の形成において「生物多様性」は重要なコンセプトです(第4回参照)。そこで「生物多様性」についての理解を深めるとともに、「生物文化多様性」という新たなコンセプトにまで視野をひろめたいと思います。湯本さんが普及・推進されてきた「ユネスコエコパーク」は、「世界遺産」が「手つかずの自然・原生自然」を尊重する傾向があるのに対して、「ワイズユース(賢明な利用)」をつうじて、里山に代表される「人の手が加わった自然・2次的自然」の生物多様性を重視し、環境政策の世界的な潮流の一つとなっています。「生物文化多様性」は、日本文化の自然とのかかわりの深さに目をひらかせてくれます。